腎臓とレイキ

 

健康教室 進化医学から見た病気

2013年10月16日

進化と病気

  生命誕生からおよそ40億年(少なくとも36億年)、人類の祖先がチンパンジー・ボノボの祖先から別れてから500万年〜700万年、人類誕生からおよそ20万年になります。
  この果てしない年月を経てなお、私たちが生存しているということは、私たちが、その生存を脅かす感染症など、さまざまな脅威に打ち勝ってきたことを意味します。
  言い換えれば、生存のための進化を繰り返して来たわけであり、その進化は病気に対しても繰り返されてきたはずです。

  ちなみに、受胎から5,6週間の間に、胎児は5億年から8億年(全体で約30億年)の進化の歴史をたどります。この膨大な年月による進化をわずか5,6週間でたどるわけですから、胎児の成長も不安定になり、この時期に流産しやすくなります。
  この永い生命体の歴史の中で、人類(の一部)が飽食の時代を経験するのは、ここ数十年に過ぎません。言い換えれば、進化の歴史の中で99.99999%以上は飢えとの戦いであったはずです。
  従って、私たちは、飢えに耐えられるように身体が進化してきたはずですが(たとえば、倹約遺伝子の存在)、栄養過剰に対する抵抗力を備えていません
  そのため、食べ過ぎると、メタボ、糖尿病や動脈硬化病になりやすくなっています。

  また、私たちの祖先が、海から陸に上がった結果、食べ物の通り道(食道)と空気の通り道(気道)が分かれましたが、まだ十分ではありません。その結果、のどに食べ物が詰まり、呼吸ができなくなって死ぬようなこともあります。
  さらに、人類が誕生してからも、その大部分の期間、寿命は30歳から40歳(日本人の平均寿命も戦前までは40歳代)でした。
  言い換えますと、ヒトは40歳前後(当時は老人)になると外敵に対する抵抗力がなくなることを意味します(外敵には、細菌やウイルスなどの病原体を含みます)。
  たとえば、女性の場合、生理がなくなり、更年期障害を経験しますが、ヒトという種の立場で考えますと、生殖能力がなくなれば、存在する意義がなくなることを意味します(男性も同じ)。むしろ、少数の例外を除いて早く死ぬことを強いられてきたといった方が良いでしょう。

  進化論的に考えれば、動物は、常に外敵との生存競争にさらされてきたわけですから、年をとれば、捕食者、食料難、感染症、環境変化に対する抵抗力を失って、死ぬ運命にあるわけです。
  早く生み、早く死ぬことで、進化のサイクルを早め、(環境変化による)種の滅亡の危険性を低下させてきたとも考えられます。従って、大型化するほど、進化のサイクルが遅くなり、環境の変化に対応しにくくなります。
  実際、大型恐竜に限らず、大型化した動物は、環境が激変するたびに滅んでいます

  このように考えると、ヒトの老化は、本質的に病的老化であって、生理的老化ではないことが当然のように考えられます。
  進化論的に考えますと、ヒトの身体は、その時々の外的環境に合うように進化してきましたが、その結果、新しい環境変化が以前の環境で有利であった条件を不利にすることもあるわけです。
  太りやすい体質は、食料の乏しい時代には生き残りに有利でしたが、現代では、万病の元になりかねません。
  2足歩行は手を自由に使えるようにしましたので、大脳が異常に発達しました。しかし、2足歩行は腰に大変な負担を強いる姿勢です。そのため、ヒトは腰痛という悩みを抱えるようになりました。*1)

  このように、病気の原因には、感染などの直接的要因がありますが、進化的要因もあることが分かります。
  この進化的要因から病気を考える医学を進化医学といいます。また、感染などの直接的要因にたいしても免疫力の進化が考えられます。
  むしろ、進化と病気の関係を考えると、免疫力の問題を無視することはできません。病気を防いだり、治したりするのが免疫力ですから、ヒトの免疫力は、さまざまな外敵と遭遇(そうぐう)することによって、進化してきたことが予想されます。
  生体の免疫力を示す顕著な例は感染に対する防衛反応です。

発熱 感染に対する防御

  動物は、感染すると体温を上げて病原体を撲滅します。

トカゲ
  体温を制御できないトカゲは、何かに感染すると、体温を2度ほど上げるのに十分な程、暖かい場所に移動します。

ネズミ
  2度の発熱のあるネズミを非常に暑い部屋や逆に涼しい部屋に入れても、体温維持機能により、元の2度高い発熱状態を維持します。要するに、発熱は、体温調整機能の不調ではなく、必要性に基づいた身体の防衛反応であることが分かります。

マラリア
  マラリアにかかると高熱を発します。
  ウィーン大学の精神科医ユリウス・ワグナー・ヤウレッグは、梅毒患者の中に、マラリアにかかると治るものがいること、マラリアが流行する地域では、梅毒がまれなことを知り、梅毒病原体である梅毒トレポネーマが高熱に弱いことを知った。
  そこで彼は、梅毒患者をわざとマラリアに感染させて、体内の梅毒トレポネーマを死滅させ、その後キニーネを投与してマラリア原虫を死滅させて梅毒を治す療法を考案しました。(ワグナー・ヤウレッグは、この業績で、1927年にノーベル賞を受賞しています。)

衛生
  感染の最良の防御は、危険の回避です。
  私たちは、汚物など病気の元になるものを本能的に遠ざける傾向がありますが、これは、自然淘汰(とうた)の結果、私たちが得た危険回避という防衛反応と考えることができます。
  皮膚は、外敵から身体を防御する重要な役割を果たしていますが、私たちは、本能的に皮膚から不要なものを取り去る行動をしています
  たとえば、サル達のグルーミングも、単なる親愛の儀式ではなく、健康管理の一環と考えられます。

痛みと倦怠感(けんたいかん)
  痛みは、傷む部分に異常が生じていることを知らせています。その組織の回復を妨げる動きを避け、同時に、将来同じような痛みを生じる危険性から避けることを学びます。
  動かすと痛い場合は、「そこを動かすな」」というメッセージであるわけです。
  また、倦怠感や身体のだるさは、動かないで静かに休んでいるように指示しています。

排出
  私たちは、気管支などが感染すると咳(せき)をしますが、これは病原体を体外に排出する動作です。
  汗や排尿もそうですが、嘔吐(おうと)や下痢(げり)も有害物や不要物を体外に排出する行為です。
  吐血(とけつ)や喀血(かっけつ)も不要物の排出行為です。
  体内の入り口である口や鼻は、鼻水や痰(たん)・つばを出しますし、眼は涙で洗います。またのどの入り口には、扁桃腺(へんとうせん)という防衛組織があります。
  出口である尿道や肛門は尿や便で侵入する病原体を排出します。
  女性の生殖器は特別の入り口を持っていますが、この膣から子宮にいたる経路も粘液の流出によって病原体の侵入を防いでします。
  また、生理による出血には、(その血液自体に不要物や有害物質が含まれていますが)子宮や膣に付着した病原体などを洗い流す役割があります。

アレルギー疾患は、過剰な免疫反応によって起る

  免疫には、感染初期の防衛反応である自然免疫(白血球、単球、マクロファージなどによる病原体を食べる攻撃)と、次に起こる獲得免疫(リンパ球の作り出すサイトカインや抗体による免疫反応)があります。
  この免疫反応のバランスが崩れると、アレルギーや関節リウマチなどを発症させます。
  獲得免疫の司令塔がヘルパーT細胞ですが、これには大きく分けて、1型ヘルパーT細胞と2型ヘルパーT細胞の2種類あります。

  1型ヘルパーT細胞は、マクロファ−ジやキラ−T細胞を活性化させたり、B細胞にIgGという抗体産生の指令を出します。このIgGという抗体が、細菌やウイルスなどを攻撃する武器になります。外敵を撃退した後も、その記憶は保持されますので、以後、同じ外敵の侵入すれば、速やかに撃退します。

  2型ヘルパーT細胞は、B細胞にIgEという抗体の産生を促します。この抗体は、花粉やダニなどのアレルゲンを撃退するのに有効です。
  本来、1型と2型のヘルパーT細胞はバランスが取れているのですが、2型が増えると、花粉などのアレルゲンに反応するB細胞を通じてIgE抗体が過剰につくられるので、アレルギー症状が発症します。
  もともと、IgE抗体は、ダニや寄生虫などの大きな病原体(最近などに比べ)に対する免疫でしたが、そのようなものがいなくなった現在の日本では、花粉などに反応するようになりました。
  これも進化が急速な環境変化ついて行けない例です。

<注> 免疫(めんえき)について

  免疫は、簡単に言えば、生体防御の仕組みのことです。
  免疫は,疫(伝染病)を免(まぬが)れる仕組みを意味しますが、その仕組み(生体防御機構)は、生体が自己と他者(非自己)を区別して、自己を他者から守ることです。
  つまり、免疫は、生体の恒常性維持機能(ホメオスタシス)の一種になります。
  この免疫には、大きく分けて、自然免疫と獲得免疫があります。

自然免疫(生まれたときから持っている免疫)
  自然免疫は、体内に進入した病原体を排除する防御反応のことで、生まれつきそなわった能力です。
  自然免疫の主たる任務は、外敵(病原体)を食べるという形で滅ぼすことです。
  細菌などの病原体は、特有の成分を持っていますが、自然免疫を担う食細胞は、そのような成分を認識する分子を出して、外敵を認識します。
  しかし、自然免疫は、血液中の有毒物質、ウイルス、細胞内病原体などに対しては無力です。

獲得免疫(外的異物の刺激に応じて形成される免疫、後天性免疫)
  生まれてから、感染や予防接種などによって獲得した免疫です(もともと免疫は獲得免疫のことを意味しました)。
  自ら抗体を作る能動免疫と他個体の作った抗体による受動免疫とがあります。
  感染してから抗体などができるのに、およそ2週間位かかりますので、その間、自然免疫によって、病原体を攻撃しています。
  病原体共通の構造パターンを認識する物質が細胞表面上にあり、病原体の感染により、いち早くこの物質が病原体を認識して、攻撃する物質(サイトカイン)を細胞から分泌させることがわかってきました。
  感染細胞が死ぬと、病原体やその破片をばら撒きますので、免疫系がそれを取り込み、その情報をヘルパーT細胞とキラーT細胞に伝達します。
  その情報に基づいて、ヘルパーT細胞は抗体をつくるように指令を出します。この抗体は有毒物質も攻撃します。
  キラーT細胞は、感染した細胞を見つけて殺します。
  この部分を説明すると長くなりますので、省略します。

参考文献

「病気はなぜあるのか」、ランドルフ.M.ネシー&ジョージ.C.ウィリアムズ著、長谷川真理子、長谷川寿一、青木千里 訳、新曜社、2001年発行

*1)西洋医学では、腰痛しか考えられないようですが、腰が体の土台になることによって、腰のゆがみが万病の原因になっています。進化医学がこのことに気づくようになれば、進化医学は、現在の机上の空論に近い水準から実用的な水準に進化すると思いますが、多分、まだまだ先のことでしょう。

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