人体を支える5つの基本機構 |
生命活動の維持
生命活動を維持するには、エネルギーが必要ですが、それには、栄養素と酸素が必要です。言い換えますと、エネルギーは、呼吸で得た酸素と栄養素を燃焼させて生じさせます。つまり、栄養素を燃焼させて、生じた結合エネルギーの一部を利用します。残りのエネルギは、再結合に使われます。
人間のような恒温動物は、獲得したエネルギーの8割以上を体温維持に使い、その残りを生命の維持・活動に使っています(例えば、細胞、タンパク質などの修復、再生)。恒温動物は、エネルギー資源を非常に浪費する存在になります。また、寄生虫や多くの細菌・ウィールスにとっては、繁殖しやすい快適な環境が維持されていることになります。恒温動物は、外界の影響を余り受けることなく生存・活動できる利点がありますが、反面、欠点も少なからずあるわけです。
さて、生命活動を維持する(エネルギー補給)には、外界と物質の交換をしなければなりません。
人体の基本機構
人体の場合、外界との物質交換を行う機構として、以下のものがあります。
呼吸器系 酸素を取り入れます。(肺臓が主役)
消化器系 燃焼に必要な栄養素を取り入れます。(小腸、肝臓が主役 )
泌尿器系 燃焼で生じた不要物を排出します。(腎臓が主役)これら3つの機構は、すべて外界との物質交換の役割を果たします。従って、これらの組織は、共通して表面積が非常に大きいという特徴があります。
しかし、これらの機構だけでは、お互いが扱っている物質間のやりとりができません。そこで、上記の物質交換機構が作動するためのエネルギーを供給すると共に、全身で生じた不要物を上記の3つの機構に運ぶ機構が必要になります。それが、循環器です。
循環器系 体内循環を行ないます。(心臓が主役)
体内循環の流れが、血液・リンパになります。
そして、これらのコントロールセンター(中央処理装置)として脳があります。
脳・脊髄 思考・判断、体内活動の維持と制御・姿勢の維持など
脳と各機構を結ぶ信号回路が自律神経です。
これ以外に、種を残すための生殖器機構や(外敵などからの)防衛を担当する胸腺、(脾臓)などの免疫機構などがありますが、基本的に、人体は、呼吸器系、消化器系、泌尿器系、循環器系、及び脳・脊髄神経系の五つの基本機構の働きによって、維持されていると言えます。
従いまして、これらの機構に異常が生じた場合、その制御回路である自律神経に影響が出ます。逆に、自律神経に異常が生じた場合も、対応する系(臓器)にその異常が反映されることになります。また、コントロールセンターである脳にも影響が及ぶ場合があります。私たちが行っている場の医学では、(現代医学では軽視されていますが)この相関関係に基づいて肉体的・精神的病に対処することになります(実際には、経験則に基づいて行ってきたわけですが、その経験則は、自律神経と内臓・脳・眼・耳・鼻・口・喉などとの医学的な相関関係とよく一致しています。むしろ、はるかに精緻であると言ってよいでしょう。)
図の説明
右図は5つの基本機構の4つを図で示したものです。
太い赤線は動脈、太い青線は(大)静脈を表しています。
各色の矢印は、血流の方向を示しています。
口から栄養素を取り込み、食道を通って、胃、小腸、大腸と降りていって大便(不要物)として排出されます(消化器系)。
途中、(主に)小腸で栄養物が吸収され、静脈(門脈)を通って肝臓に運ばれます。
肝臓では、体内で処理できる栄養素に分解して血液に戻します。 濾過された不要物は、膀胱に貯められて尿として排出されます(泌尿器系)。
このようにして、心臓から送り出される血液は、酸素と栄養素、ホルモンなどを各組織の細胞に運び、そこで酸素の燃焼が行われ、不要物を持ち帰ります(循環器系)。この流れには、後で説明するリンパも関わっています。
燃焼は細胞内で行われます。
一部の栄養素と酸素を燃焼させて、エネルギー生みだし、燃え残りのかすなどを不要物として排出します(燃焼は、主にミトコンドリアが担当しますが、ここでは説明を省きます)。
<注>
人体の基本機構として5種類だけ説明しましたが、ご参考までに、残りを含めて下に記しておきます。
機 構 | 臓器・器官 | |||||||
呼吸器 | 口 | 鼻 | 喉頭 | 咽頭 | 気管 | 気管支 | 肺 | |
消化器 | 口(歯) | 喉頭 | 咽頭 | 食道 | 胃 | 小腸 | 大腸 | 肛門 |
泌尿器 | 腎臓 | 尿管 | 膀胱 | 尿道 | ||||
循環器 | 心臓 | 脾臓 | 骨髄 | 血液 | ||||
消化腺 (唾液腺 膵臓 肝臓 胆嚢 ) | ||||||||
神経系 | 脳 | 脊髄 | 神経 | |||||
生殖器 | 乳房 | 卵巣 | 子宮 | 胎盤 | 膣 | 精巣など | ||
副腎 | 卵巣 | 胎盤 | 精巣 | |||||
内分泌器 | 視床下部 | 下垂体 | 松果体 | 甲状腺 | 副甲状腺 | |||
運動器 | 骨 | 軟骨 | 骨格筋 | 腱 | 靱帯 | |||
感覚器 | 目 | 耳 | 鼻 | 舌 | 皮膚 | 粘膜 | 筋紡錘 |