骨盤が開くと過食する |
交感神経は食欲を抑制する神経
「健康に関する誤解」のところで、骨盤の開きと過食の関係をどの程度説明するべきか迷い、非常に中途半端になってしまいました。詳しく説明しても自己満足に終わる可能性を危惧したのですが、やはり気持ちが良くないのでもう少し説明いたします。
本質的な問題は、自律神経と食欲には強い関係があるということです。交感神経は、闘争&逃走の神経という言い方ができると思いますが、交感神経が活性化しますと、集中力が増し、活動が活発になります。従って、敵との闘争時に最大限に活性化されますが、この闘争の相手は、捕食者や競争相手だけではありません。
(自然界の)生体にとって最大の敵は飢えであり、私は、この飢えとの戦いが生物進化の原動力ではないかと考えています。従って、交換神経の大きな役割は飢えをしのぐことにあります。言い換えれば、交感神経が活性化していると食欲が抑制されます。
過食をすると交感神経が不活性になる
食事をしますと消化器系の活動が活発になりますが、消化器は副交感神経系の臓器ですので、副交感神経が活発になります。従って、過食が続きますと、(副交感神経の優位が続き)、交感神経が不活性になります。
過食だけでなく、のんびりした生活、怠惰な生活、メリハリのない生活、あるいは良く昼寝をする、このような生活は副交感神経優位の生活ですから、交感神経が不活性になります。
交感神経が不活発になると過食しがちになる
自律神経神経を支配しているのは(脳の中央付近にある)間脳ですが、間脳は視床と視床下部で構成されています。視床は個々の内蔵を支配する自律神経を調整しますが、視床下部は、自律神経の機能を総合的に調節しています。(呼吸運動や血管運動などの個々の自律機能の調整は視床下部では行われません。)同時に、視床下部は摂食、飲水、性行動、睡眠などの本能行動や怒り・不安などの感情行動の中枢にもなっています。
従って、食事の欲求調整は視床下部で行われており、交感神経が活性化していれば、食欲は抑制されますが、交感神経が不活発になると過食をする傾向があります。
摂食中枢と満腹中枢
動物の視床下部の外側野を破壊しますとえさをとらなくなり、逆に刺激するとさらにえさをとることが観察されています。従って、視床下部外側野は摂食行動を促進すると考えられるので、摂食中枢と名付けられました。
また、視床下部の内側野を破壊しますとえさをさらにとりますが、そこを刺激するとえさをとらなくなります。従って、視床下部の腹内側核(腹内側野)は摂食行動を抑制すると考えられるので満腹中枢と呼ばれます。
摂食行動に対し、摂食中枢と満腹中枢は接触行動に対して対立的に働いて神経の調節を行っています。(摂食中枢と満腹中枢を総称して食欲中枢といいます。)
要するに、摂食中枢には、空腹感を起こさせる作用があり、満腹中枢には、満腹感を起こさせる作用があると考えられています。満腹感を起こさせるには、満腹中枢を刺激すればよいわけですが、通常、満腹中枢は血糖値が上昇すると刺激され、満腹感を感じるようになります。*1)
左骨盤が開く(交感神経が不調になる)と過食する
視床下部には食欲を制御する食欲中枢があるわけですが、自律神経が乱れますと視床下部の食欲調整の信号がうまく伝わらなくなり、食欲中枢が正常に機能しなくなります。このような理由で、交感神経が不活発になると食欲を抑制できなくなるわけです。
また、交換神経が不活発になると、(左の)骨盤が開いてきます。左の骨盤が開くと腎臓の働きが低下しますが、その結果、尿酸の処理が滞り、その多くが胃酸に変わります。そのため、胃は多くの食物を受け入れられるようになり、過食の悪循環が続くことになります。
結局、過食をすると交感神経が不活発になり、左骨盤が開きます。逆に、左骨盤が開くと、(交感神経の働きが弱まり)過食することになります。
食欲を抑制するツボ
食欲を抑制するには交感神経を活性化すること、つまり、左の骨盤を締めればよいわけですが、食欲を抑制するツボも知られており、古くから活用されてきました。そのようなツボを2点ご紹介します。
飢点(きてん)
異常な食欲を抑制するツボです。
右図に示すように、耳たぶのそばにあります。このツボを親指とひと差し指で(痛みを感じるくらい)強く挟み、息を吐ききったところで離します。
食事の2,30分前に数分程度行ってください。
飢点の近くにある胃点も食欲を抑制するのに効果的ですが、ここでは省略します。
手の平の親指の付け根部分
右図の緑色の線に対応する部分を指で赤くなるほど強くつねります。(食事前に数分間行ってください。)
ここを優しくつねると逆効果(食欲を刺激)になりますのでご注意ください。
*1)食事をすると、それが消化・吸収されて、血液中の血糖値が上がります。そうすると、血糖値を下げるために膵臓からインスリンが分泌されますが、脂肪細胞からも生理活性物質レプチンが分泌されます。このレプチンが脳に働いて、満腹中枢を刺激して満腹感が起きます。
このように、満腹中枢が刺激されるまで時間がかかりますので、早く食べると食べ過ぎる傾向があります。ゆっくり、咀嚼(そしゃく)しながら食べることが、食べ過ぎを防ぐ食事の基本です。その意味では、一人で黙々と食べるのは好ましいことではないのかもしれません。