<放射能関連の付録> |
このページは、本ホームページとは関係のない内容になりますが、前ページとの関連で掲載します。
元素の名前の後に数字が書いてあって煩(わずら)わしいと思いますが、数字は無視してください。
(この数字は原子核の重さ、質量数を表しています。この数字で、放射性元素かどうか分かります。)
最初に放射線について簡単に説明します。
放射線
放射線には、アルファ線、ベータ線、ガンマ線の三種類があります。
アルファ線 ヘリウム原子核の流れ
重い粒子の流れですので、ほとんど飛びません。紙1枚で遮(さえぎ)られます。
ベータ線 電子の流れ(電子線)
電子の流れですので、これもほとんど飛びません。ただ、紙のように穴だらけのものでは完全に遮(さえぎ)ることはできませんが、プラスチック、樹脂や金属板のように穴のないものであれば、遮蔽(しゃへい)できます。
最近は、ブラウン管テレビが大変少なくなりましたが、あのブラウン管は、スクリーンに大量の電子線をぶつけることによって映っています。放射線の一種であるベータ線とはエネルギーが違いますが、正体は全く同じ電子線です。しかも、放射能騒ぎの放射線と比べて、桁違い線量の多い電子線です。
ですから、日常的にブラウン管のテレビを観る行為は、(ブラウン管の中だけですが)お茶の間で、毎日、放射能を大量発生させることになります。
ガンマ線 高エネルギーの電磁波
X線よりエネルギーの大きい電磁波ですので、X線よりさらに透過力があります。
電磁波において、エネルギーが非常に大きいということは、透過力があるということです。
(ただし、透過力があるからエネルギーが大きいとは言えません。エネルギーが小さい場合も透過力があります。)
言いかえますと、人体との相互作用も強くないことを意味します。
可視光や紫外線のように、直接吸収されるのではなく、二次相互作用によって被害を与えます。
<注>
放射線は、原子核が崩壊(ほうかい)するときに放出される線ですが、
例外的に、中性子(線)を放出する場合があります。
この場合、元素の種類は変わりませんが、原子核の重さが少し軽くなります。
また、テクネチウム99mのようにガンマ線だけを放出するものもあります。
従いまして、アルファ線とベータ線は、よほど近くに居ない限り、放射能としての危険性はありません。
体内被ばくの場合には、アルファ線はベータ線の20倍も破壊力があります。
また、放射能は、(放射)線源から離れれば急速に弱まります。
放射線以外にも有害な線として、紫外線、X線、陽子線、中性子線などがあります。
放射線も含めて、これらの有害な線は、宇宙線として降り注いでいますが、ほとんどは電離層や大気で遮蔽(しゃへい)されています。
放射能にさらされる危険性を考えますと、
(1) 体内被ばくの危険性は、ベータ線
福島の事故では、アルファ線による体内被ばくの可能性はまずありません。
ヨウ素131、セシウム134、セシウム137、ストロンチウム90などは、すべてベータ線を放出します。
アルファ線放出で崩壊するのはプルトニウム239ですが、体内摂取の可能性が低く、
万一、摂取されても、体内にとどまりにくい物質です。
(2) 体外被ばくの危険性は、ガンマ線
放射性物質は、すべてガンマ線を放出します。
(ベータ線放出であれ、アルファ線放出であれ、必ずガンマ線放出を伴います。)
ということになります。
放射能の強さ
放射能は、(原子核が崩壊して)放射線を出す能力のことですが、その強さを表す単位として、ベクレルとシーベルトがマスコミ報道で目立ちましたので、確認しておきます。
ベクレル
ベクレルは、1秒間に放射線を放出して崩壊する原子核数です。
1秒間に、100個の原子核が崩壊して放射線を放出していれば、その放射線の強さは100ベクレルになります。
ただ、放射性物質の量を指定しないと意味をなしません。マスコミ報道で使われるベクレルは、1Kgあたりの数値のようです。
地面からの放射能の場合には、1平方メールあたりの数値がよく使われます。
私の世代では、ベクレルよりキュリーの方がなじみのある単位ですが、ベクレルを使いますとわずかな放射能でも非常に大きな数値になります。
逆に、キュリーでは、放射能漏(も)れのような場合には小さすぎます。ちなみに1キュリーは370億ベクレルです。
シーベルト
シーベルトは、被ばく総量を表す単位です。時間あたりの被ばく量を表す単位として、毎時シーベルト(シーベルト毎時とも言います)なども使われます。
ミリシーベルトはシーベルトの1000分の1の単位、
マイクロシーベルトはミリシーベルトのさらに1000分の1,シーベルトの百万分の1の単位です。
1 シーベルト = 1,000 ミリシーベルト = 1,000,000 マイクロシーベルト
ベクレルとシーベルトの関係(セシウム137の場合)
1万ベクレルのセシウム137から1mの距離での放射能は、
1日あたり、0.000019ミリシーベルト(0.019マイクロシーベルト)
1年あたり、0.0069ミリシーベルト(6.9マイクロシーベルト)
です。この場合は、ガンマ線による被ばくです。
被ばくの許容量
100−200ミリシーベルトまでの被ばく量では人体に害がないとされています。
(一部に損傷ができたとしても直ちに修復されます)
一度に250ミリシーベルト以上を被ばくすると、白血球の減少が認められています。
(時間をかけて250ミリシーベルト程度を被ばくするのであれば、問題ないと考えられています。)
一応、よく知られている被ばく量と健康被害の関係を以下に列挙(れっきょ)します。
0〜 50ミリシーベルト : 一時及び長期の被ばくとも健康被害なし。
50〜100ミリシーベルト : 一時及び長期の被曝とも健康被害はほとんど無い。
(100 ミリシーベルトから、胎児に異常が出る可能性が生じる)
250ミリシーベルト :臨床的症状はほとんどない。
500ミリシーベルト :がんになる可能性が生じる。数分間で被ばくすると、リンパ球一時減少。
500〜1000ミリシーベルト:がんになる可能性が高まる。リンパ球減少。
1000〜2000ミリシーベルト:一時被ばくで、吐き気や疲労感、長期被ばくでがんの確率が高まる。
3000〜5000ミリシーベルト:一時被ばくで、吐き気、下痢の症状。1週間後に抜け毛や食欲減退。
治療がしなければ、5割の人が死亡する。
被ばく量の例
病院での検査で浴びる放射能(1回あたりの被ばく量です)
胸のレントゲン撮影 0.1 ミリシーベルト
胃のレントゲン撮影 0.5 ミリシーベルト
頭のレントゲン撮影 2 ミリシーベルト
腰のレントゲン撮影 3 ミリシーベルト
胸部CTスキャン 7 ミリシーベルト
腹部CTスキャン 20 ミリシーベルト
頭部CTスキャン 50 ミリシーベルト
がんの放射線治療 5万 ミリシーベルト 〜 8万ミリシーベルト
医療検査で使われるテクネチウム造影剤は、テクネチウム99mが含まれており、これを摂取するとかなりな被ばく量になるはずですが、それを表す具体的な数値が見つかりませんでした。
1回のレントゲン撮影でも数ミリシーベルトの被ばく量がありますが、CTスキャンの被ばく量は桁が違います。
これでは、放射能汚染の最大の危険地帯は病院であると言わざるを得ません。
もし、ミリシーベルト以下の放射線量でがんができるのであれば、病院での検査はがんをつくるために行っているようなものになります。実際、1回の頭部CTスキャンによる放射線量、およそ50ミリシーベルトは、一時被ばくの量ですから、きわめて大きな値です。安易に無視できる数値ではありません。
特に、このような検査を受ける人は、疾患があるか、その可能性のある人です。
そのような人は、冷えなどの可能性がありますので、放射能に弱い人といって良いでしょう。
原発事故を契機(けいき)に、その安全性について再検討を求められるべき問題だろうと思います。
がん治療の場合には、致死量(1万ミリシーベルト)よりはるかに多い放射線を患部に当てますが、他の部位に放射線が当たるわけではありませんので、一応、有効な治療法になっているようです(多分?)。
しかし、頭で納得しても、のけ反るような被ばく量です。これを何回もするわけですから、言葉が出ません。
自然放射能 約2ミリシーベルト(世界平均で年間2.4ミリシーベルト)
宇宙から、 年間0.28 ミリシーベルト(宇宙線)
大地から、 年間0.44 ミリシーベルト(ガンマ線)
空気から、 年間1.26 ミリシーベルト
体内から、 年間0.027ミリシーベルト
これらをあわせると、日本での自然被ばく量は、年間約2ミリシーベルトになります。
国内でも、地域によって自然放射能の量は違います。
空気から被ばくするのは大気に含まれるラドン222です。
空気を吸うと肺に入りますので、肺がんリスクの一つに上げられています。
なお、ラドンは、ウラン系列に属しますが、ヘリウムやネオン、アルゴンなどと同じ希ガス元素です。
体内放射能
体重60Kgの日本人で約7,000ベクレル(年間0.027ミリシーベルト)です。
内訳は、
カリウム40: 4,000ベクレル(年間0.0248ミリシーベルト)、
炭素14: 2,500ベクレル(年間0.00145ミリシーベルト)、
ルビジウム87: 500ベクレル
鉛210・ポロニウム210(20ベクレル)など
となります。
食品の放射能
カリウムには、放射性のカリウム40が、混ざっていますので、1gのカリウムは30.4ベクレルの放射線を放出しています。また、食品には、必ずカリウムが含まれていますので、炭素14のみならず、カリウム40の放射能があります。以下に、食品1Kg中のカリウムによる放射線量の例をを示します。
食品名 | カリウム含量(g) | 放射線量(ベクレル) |
こんぶ(乾) | 53 | 1611 |
わかめ(素干し) | 52 | 1581 |
ひじき(乾) | 44 | 1338 |
かつおぶし | 9.4 | 286 |
干ししいたけ(乾) | 2.1 | 64 |
生ハム | 4.7 | 143 |
さんま | 2.6 | 79 |
納豆 | 6.6 | 201 |
食パン | 0.97 | 29 |
牛乳(普通) | 1.5 | 46 |
これは、1例にすぎませんが、すべての食品が放射能を持っていることはご認識ください。
ついでに、1Kgの海水にも12ベクレルのカリウム40があります。
福島の原発事故による放射能
2011年3月11日に起きた東日本大震災により、東京電力の福島第一原子力発電所の各原子炉で放射性物質の大量放出という事故がありました。再臨界状態になる危険性は完全に無くなったとは思いますが、現在も収束のための努力が続けられています。最終的に廃炉にするわけですから、まだまだ長い道のりがあり、多くの人がその処理のために努力する必要があります。
本来、はるかに小さな事故で終わったはずですが、原子炉事故に対する致命的な初動の遅れ、避難指示の遅れ、廃炉に対する逡巡(しゅんじゅん)などから、大規模な放射能事故に発展し、周辺住民の方も被ばくする結果になりました。
事故後、福島周辺で各種の放射性物質が検出されていますが、現在では、半減期の短いキセノン133(半減期5.2日)やヨウ素131(半減期は8.1日)などは無視できるはずです。
今後、汚染源として注意する必要がある放射性元素は、セシウム 137(半減期 30.1年)とセシウム 134 (半減期 2.06年)だろうと思います。
(セシウム134及び137やストロンチウム90はベータ線を放出しますが、同時にガンマ線も出します。)
ストロンチウム90(半減期28.8年)とプルトニウム239(半減期 2.41万年)も長く残りますが、両者ともセシウムに比べて放出されにくく、また拡散しにくい特徴があります。
ただ、プルトニウム239に比べると、ストロンチウム90の方が放出されやすく拡散しやすいので、東北や関東でも観測されています。プルトニウム239は、原発周辺に限定されるだろうと思います。
<注> 半減期
半減期は、量が半分になる時間(期間)です。放射性元素の場合、その量(放射能)が半分に減る時間を意味します。
半減期が8日であれば、8日後に半分、16日後に4分の1、80日後に約1000分の1に減ります。
半減期が30年であれば、30年後に半分、100年後に約10分の1、300年後に約1000分の1に減ります。
人体に対する放射能の影響
放射能は、線源から100万ベクレル放出されていても、1m以上離れた外部被ばくである限り、自然放射能以下になりますので、心配いりません。
問題になるのは、経口摂取した時です。セシウムを例にしますと、セシウムは体内に取り込まれると、全身に分布し、完全に排泄されるまで100日以上の期間が必要になります。
10,000ベクレルのセシウムを経口摂取した場合の被ばく総量は、
セシウム 137: 0.13ミリシーベルト
セシウム 134: 0.19ミリシーベルト
です。
従って、経口摂取でも10万ベクレルまでは、被ばく総量で2ミリシーベルト以下ですから、自然放射能(年間約2ミリシーベルト)以下になります。また、ほうれん草など、野菜や果物についたセシウムは、洗えば簡単に落ちるはずです。
今後の問題は、汚染された土壌で育つ野菜や果物ですが、仮に、1kgあたり10,000ベクレルあったとしても、毎日、100g位の摂取であれば、全部吸収されるとしても、0.5ミリシーベルト(セシウム 137の場合)から0.7ミリシーベルト(セシウム 134の場合)です。
一年間、毎日食べることは考え難いですし、1kgあたり10,000ベクレルの野菜や果物も検出されていません。表面に付着した野菜ですら、一時的な最大値で2000ベクレル程度ですから、実際にはさらに少ないはずです。
従いまして、これまで検出された例から判断する限り、放射能汚染食品を摂取することによる体内被ばくは、本来持っている体内放射能(年間0.027ミリシーベルト)よりもはるに少ないことになります。