がんの予防法1 |
がんの発生(復習)
健康教室の「がん発生の機構1」および「がん発生の機構2」で説明しましたように、がん細胞は、がん関連遺伝子の異常、ミトコンドリアの異常が生じた場合に発生します。
発生したがん細胞の周辺の血流が悪い(冷え)と十分な免疫機能を発揮できないため、がん細胞が増殖する結果になります。
もう一度確認しますと、
(1)偶然にがん細胞が発生 → 免疫力低下でがん細胞増殖
(2)酸素不足(冷え)などによりミトコンドリア不活性
→ がん細胞発生 → 免疫力低下でがん細胞増殖
ということです。
基本的に、がん細胞の発生とがんの増殖は異なる現象であることを認識すべきです。この認識がないために、がんの予防策が訳の分からないものになっています。
免疫力低下ががんの原因
どんなに食べ物に注意しても、たばこや酒などを避けていても、がん細胞は常に発生していますし、がんになることがあります。繰り返しますが、がん防止には、がん細胞の発生を抑えることより、発生したがん細胞を消滅できる免疫力を維持することの方が重要です。その意味では、がん(一般に生活習慣症)は、炎症などと同じ理由(免疫力の衰え)でできると考えています。
ただ、発症するまでの時間スケールが、他の病気と違います。下図に、がんが発生してから、臨床的にがんが確認できるまでの年月を示していますが、大変長い時間を必要とします。
一応、10回分裂するのに必要な年数として3年から10年(発見できるがんに成長するまで9年〜30年位)必要としていますが、標準的には4年から6,7年位です。つまり、がん細胞が発生して発見でききる大きさになるまでの標準的な年数は12年〜20年位と考えられています。*1)
形式的に、がん細胞が2倍になる日数を一定にしましたが、実際には身体の状態によって大きく異なるはずです。がん細胞が発生しても、そのがん細胞はすぐに死滅させられるはずですが、人の身体は、いつも健康とは限りません。身体が不調の時、内臓の調子の悪いときもあるでしょう。そのような時期が一定期間続けば、(偶然)発生した(多数の)がん細胞が死滅せず、増殖して、微小がんになる可能性があります。
4、50歳代以上の人の各臓器には、たいてい、多数の微小がんがありますが、それは、過去に免疫力の低下する時期が何度かあったからだろうと考えています。その後、内臓などの調子が完全に回復すれば問題ありませんが、多少具合の悪さが残っていれば、微小がんを完全に死滅させることができず、がん細胞とリンパ球などとの激しい戦いが続き、がんの増殖に関して、一進一退の攻防を繰り返していることが予想されます。
そして、強度の精神的ストレスや内臓障害など、免疫力を大きく低下させる事態を生じますと、がんの増殖力の方が優勢になります。その結果、微小がんは成長し、その期間が長ければ、身体に影響を及ぼす大きさのがんに急成長をするのであろうと考えています。
がんの原因は冷え
がんは、日常的に発生しているがん細胞よりも、そのがん細胞を死滅できない免疫力の低下の方が問題であることを強調してきました。では、免疫力を低下させるものは何かといえば、それは冷えです。血液循環に滞りがなければ、冷えは生じませんし、免疫力の低下を招くこともありません。これは「健康教室」で何度も説明してきたことです。
がん細胞の発生原因はさまざまでしょうが、それを滅ぼすか大きくするかは身体の状態、つまり、冷えの有無に依存しています。要するに、冷えががんをつくります。冷えががんの究極の原因なのです。
実際、がんになる人の共通点は体温が低いこと(35℃台以下)です。血流の停滞は、部分的な冷えだけでなく、血液循環を悪くしますから、体温自体も下がります。
具体的に考えてみましょう。
食べ過ぎ、飲み過ぎなどで、胃腸や肝臓などの内臓を使いすぎますと、それらの内臓筋の緊張が持続します。そうすると、筋の緊張によって血管が圧迫され、血流が悪くなります。この状態が続きますと、血流の悪化(冷え)が続くことになり、その部分での免疫力が低下します。その先には炎症があります。また、内臓の使いすぎによって、損傷細胞が増加しますが、これは活性酸素の発生を増やし、がん細胞を発生させ易くします。
心配、怒り、焦燥感や責任感などによる精神的緊張や肉体的緊張が極度に続く場合(過剰なストレス)、それは、交感神経の過緊張状態にあることを意味します。交感神経の過緊張は血管の収縮、対応する筋の収縮をおこし、血流の低下(冷え)を招きます。要するに免疫力が低下するわけです。交感神経の緊張自体は、血管を収縮することにより血圧を高め、血流を増やしますが、それが行き過ぎると、血流を低下させます。
また、一般に、ストレスは、副交感神経系の臓器である消化器系などにきますが、各種の強い感情によって、影響を受けやすい臓器があります。
一般のストレス ⇒ 胃腸
怒り ⇒ 肝臓
不安 ⇒ 腎臓
悲しみ・憂い ⇒ 肺臓
精神的疲労 ⇒ 腸・膵臓
このような感情が強い場合、血液循環の偏りを生じ、冷えを招きます。一般に、強い精神的ストレスは、血液を頭部などに集めるために、内臓の冷えを生じます。冷えについては、健康教室の「 冷えの種類」をご参照ください。
冷えの原因である過剰なストレスは、眠りを浅くします。夜中に何度も目が覚める場合、ご注意ください。
がんの予防法
結局、がんを防ぐ最良の方法は、以下の2点になります。
1.ストレスをため込まない(夜、熟睡できることが大事)
熟睡とは、睡眠時間が短い眠りを意味します(熟睡すれば、長い睡眠は不要)。
2.身体を冷やさない(部分的な冷えに気づかないことが多い)
⇒ 体温を36℃以上に維持する(できれば、36.5℃以上)
これは、先に書きましたように生活習慣症を含む万病の予防法になります。がんだけ特別というわけではありません。
また、1.と2.はお互い無関係ではありません。相互依存の関係があります。両者をまとめて言い表すと抽象的になりますが、「自律神経を活性化する」あるいは「血液循環を良くする」ことです。
がんの予防策として、ビタミンCやEなどの栄養補助食品、あるいはそれらを多く含む抗酸化食品の摂取、紫外線防止*2)などが指摘されていますが、これらは、基本的にDNAなどの傷害を防ぐことが目的で、どの程度の効果があるのか分かりません。本質的ながんの予防策は、できたがん細胞を抹殺できる免疫力を維持することです。つまり、血液循環を良くすることであり、言い換えれば、(部分的な)冷えをなくすことです。
その目安が体温であり、36.5℃以上の体温を保つことが理想です。理想の体温は、36.8℃〜37.1℃です。現在の日本人には、維持することが難しい体温ですが、戦前の日本人の平均体温は、36.8℃以上でした。また、欧州では、37℃前後が平均の体温になっています。日本では、37℃を超えると熱があると見なされますが、少し間違った方向にいっている感じがします(もちろん、平熱が35℃台か36℃台の人が一時的に37℃になれば、熱があるといえますが)。
がんの予防には、がん細胞ができることを防ぐ(そもそも不可能です)より、良好な免疫力を維持することの方が重要であると言い切る理由は、がん患者の体温にあります。
これもすでに書きましたが、がんになる方に共通していることは、体温が低いことです。がんになったから体温が下がったのではなく、それ以前から体温が低かったのです。そして足が冷えています。
がんになる人は、35℃台あるいは34℃台の低体温の人です。言い換えれば、がんは免疫力の弱い方にできます。
ここで説明した考え方には異論があるかもしれません。たとえば、独立行政法人国立がん研究センターのがん予防・検診研究センター予防研究部のHPの「たばこと肺がんとの関係について」のページに「たばこを吸わない人に比べて、たばこを吸う人は男性では4.5倍、女性では4.2倍肺がんになりやすい」と書いてあります。このような論に従えば、がんの発生要因を問題にすべきであると考える方が自然でしょう。本ホームページ以外ではすべてそのように考えているだろうと思います。各種の調査研究もその方向で行われてきました。
しかし、2005年の肺がんの例で見ますと、同年の日本人死亡者数は約108万人で、肺ガンでなくなった人は約6万人です。この年に肺ガンでなくなった人の割合は、5.6%にすぎません。言い換えますと、喫煙者でも肺がんで亡くなる方はきわめて少ないことになります。さらに、タバコ(の煙)ががん細胞の発生確率を大きくしたのか、それとも免疫力を下げたのかが分かりません。
タバコの煙には、タール、ニコチン、過酸化水素水などの数百種類の有害物質が含まれています。たばこの煙を吸うと、肺にタールが付着し、過酸化水素などによって活性酸素が発生します。従って、肺がんなど肺の病気になる確率は高くなることが予想されますが、実際には、喫煙者の中で肺を煩(わずら)う人は少数です。これは一例にすぎませんが、がんの発生要因よりも、がんを撲滅させる免疫力の方が重要であることがお分かりいただけるのではないでしょうか。
しかも、がんの発生要因には、がん細胞の発生確率を高めるよりも免疫力を下げる可能性のあるものが少なくありません。がんとの因果関係を問題にする場合、免疫力との因果関係も問題にすべきです。たとえば、がんの要因として、酒、タバコ、高脂肪食、炎症、ストレスなどが指摘されますが、これらは免疫力と関係があるように思います。いずれにせよ、がんになる因果関係を調べた研究報告において、多くの場合、がんになる割合は小さく、その小さな割合の中での比較であり、大部分の人間はその因果関係とは無関係です。因果関係と無関係な人の方が圧倒的に多いということになぜ注目しないのか、私にはそちらの方が不思議です。
さらにもう一つ、発生原因より、免疫力の方が重要であると思われる例を挙げておきましょう。
心臓と小腸です。この2つの臓器にがんができることはまずありません。日本人の場合、小腸がんになる人の割合は0.01%以下です。(これでも、欧米に比べると4,5倍になります。)そして心臓がんなると、さらに少なく、きわめて希になります。
これらの臓器にがんが起こりにくい理由として考えられるのは、両臓器とも免疫力が非常に高いことです。
小腸の場合、外界との接点(消化物の取り込み)を持っていますので、異物侵入を防ぐために全免疫系細胞の6割以上が小腸に集中しています。小腸は免疫系に何重にも守られた臓器です。
心臓は臓器温度が約40℃で、臓器中最も高い温度になっています。従って、最も免疫力の高い臓器と考えてよいでしょう。心臓の場合、細胞分裂をしない心筋細胞が大部分であることも、心臓がんが少ない理由の一つです 。しかし、他臓器の細胞が心臓に転移したがんも少ないことから、心臓に転移した他臓器のがん細胞も生き残り難いと考えられます。従って、がんの抑制に免疫系が大きな役割を果たしていることは確かだろうと思います。
なお、消化器系である食道、胃、小腸、大腸などはがんができやすいですが、これらの臓器は物質との接触が多く、表皮細胞の細胞分裂(新陳代謝)が多いからと解釈することができます。この場合、がんのできやすさは、発生原因によることになります。
しかし、消化器系は外界と通じているために冷えやすく、免疫力の低下を招きやすいと考えることもできます。消化器系については、別項で説明する予定です。
いずれにせよ、消化器系においてもがんにならない人の方が遙かに多いわけですから、免疫力を維持しておけば問題ないはずです。
*1)ここでは大人のがんを前提にしていますが、小児がんの場合はもっと早くなります。赤ちゃんは免疫力が弱く、細胞の増殖力が強いため、がん細胞は急速に増殖します。小児がん自体はまれな病気ですが、胎児の段階で発生しています。肝臓がんを例にとりますと、肝臓がんは、胎児の時に肝臓をつくるはずの細胞が、身体ができあがった後も死滅せずに残り、異常細胞に変化して増殖したものと考えられています。
*2)日本人の場合、皮膚細胞にメラニン(色素)がある程度含まれていますので、紫外線によって(皮膚)がんになる確率は、非常に少ないといってよいでしょう。このメラニンは細胞核を包むように存在していますので、紫外線からDNAを守っています。そして、紫外線は、(シミ、ソバカス、シワ、タルミなど)肌の老化原因になります。最悪の事態が皮膚がんです。従いまして、十年、二十年と(紫外線を含む)直射日光にさらされる生活をしていますと、肌が早く老化し、豊かなしわやシミに恵まれることになります。かって、マスコミ主導で「ガングロ」ブーム?なるものがありましたが、非常に腹立たしい思いをしていました。少なくとも、(公的な影響を与える)マスコミが、(明確に)健康によくないことを宣伝すべきではありません。